間違った日本語 〜 正しくは 「 雉も鳴かずば撃たれまい 」 〜
|
舌戦で麻衣などに負ける気はしない。
そんなナルにとって、なしくずし的に麻衣を伴ってホテルにチェックインすることはわけのない話だった。そんなつもりはないと強情を張っていた麻衣も、今では充実したアメニティグッズに大騒ぎしながらシャワーを使っている。
ひょうたんから駒。
ナルが日本の諺に詳しければ、正しくそんな状況を満喫していたということになる。
ブルブルブルブルブルブルブルブル
テーブルの上で再度震える麻衣の携帯電話。
――プツッ
『 おう、麻衣。ようやく出たな!無事に帰ったか? 』
「取り込み中だ。邪魔するなぼーさん」 『・・・・・・・・・・!!!!!!!!ナル!?』
そして無意味な絶叫まで聞いてやる必要はないと、ナルはそのまま通話を切った。
ちなみに長押し。
電源OFF。
シャワーを終えた麻衣がバスルームから出てくると、ナルは機嫌良さ気にソファに寛いでいた。突如良くなった機嫌の意味が分からなくて、麻衣は首を傾げながら尋ねた。 「どうしたの?」 頬が上気している麻衣を見上げ、ナルは口の端を僅かに吊り上げた。 「麻衣、こういうことを日本語では何と言うんだ?」 そうして、機嫌の良くなった博士は、一つ間違った日本の諺を身につけた。
|
|
|